AIは「指示を待つ」時代から、「自ら考え、動く」時代へ。AIが私たちの日常に溶け込み、欠かせない存在となりつつある現在、その進化は次のステージへと向かっています。それは、AIが単なる「便利な道具」から、私たちの意図を汲み取り、自律的に思考し、行動する「主体的なパートナー」へと変貌を遂げる未来です。私たちは、この次世代AIの可能性を探るべく、先日「新しい世界を作るAGI開発」をテーマに、AGIハッカソンを開催いたしました。AI BOOTCAMP BUSINESS部(弊社が運営するコミュニティ、以下AIBB)を中心に全国から集ったエンジニア・ビジネスパーソンたちが、わずか2週間で生み出したのは、単なるアプリケーションではありません。それは、私たちの働き方、学び方、そして生き方そのものを塗り替える可能性を秘めた、未来への確かなプロトタイプでした。このハッカソンで誕生した衝撃的な3つのAGIの卵と、その根底にある「次世代AGI」の定義についてご紹介します。1. 「指示待ちAI」はもう古い?私たちが定義する次世代のAGIとはAGI(汎用人工知能)という言葉には様々な定義がありますが、今回のハッカソンでは、より実践的な未来を見据え、私たちはAGIをこう定義しました。「指示なく、自ら状況を意味付けし、主体的に行動するAI」これは、近年の対話型AIとは違います。ChatGPTのような優れたAIも、その動作のきっかけは「ユーザーからの指示」です。しかし私たちが目指したのは、そのもう一歩先。AIが私たちのパートナーとして、より能動的に関わる未来です。そのために、私たちはAGIが持つべき核心的な能力を2つに絞りました。① 状況を自ら「意味付け」し、判断する力従来のシステムでも、「Webサイトのアクセス数が1,000を超えたら通知する」といった、単純な数値(しきい値)に基づいた自動化は可能でした。しかし、AGIは違います。センサーやインターネットを通じて得た情報をリアルタイムで認識し、「この情報は、何を意味するのか?」と、まるで人間のように背景や文脈を解釈し、意味付けを行います。そして、その意味付けに基づいて「今、行動を起こすべきか、まだ待つべきか」を自律的に判断するのです。② 指示なく「主体的」に行動し、創造する力AGIは、誰かに指示されるのを待つのではなく、自ら課題を発見します。そして「この課題を解決するためには、何をすべきか?」を考え、必要なタスクを洗い出し、具体的な成果物までを自ら作り上げます。この2つの能力が組み合わさると、何が起きるのか例えば、あるAGIが企業のWebサイトを常に監視しているとします。そこで「新規事業立ち上げ」のプレスリリースを発見したAGIは、それを単なるテキストとしてではなく、「この会社は事業拡大に伴い、新たな人材を求めている可能性が高い」と意味付けします。そこからAGIは、誰に指示されるでもなく、「採用活動を支援する必要がある」と主体的に判断。すぐさま競合他社の採用動向を調査し、最適な候補者となりうる人物をリストアップ。さらには、その企業の理念や事業内容に合わせた魅力的なスカウトメールの文面まで作成し、「このような形でアプローチしてはいかがでしょうか?」と提案してくる。このような「自律的で主体的なパートナー」こそが、今回のハッカソンで参加者たちが目指したAGIの姿です。2. ハッカソンの内容:未来を彩る3つのAGIアプリケーション最終発表会では、この定義に基づいた三者三様のAGIが披露されました。いずれも、私たちの生活や仕事を根底から変える可能性を秘めた、素晴らしいプロダクトです。【教育】学習が「未来の資産」に変わる学費準備アプリ最初に発表されたのは、教育格差という社会課題に正面から向き合った学習支援アプリです。経済的な事情で学習機会が制限される子どもたちを支援することを目的としています。このアプリケーションの最大の特徴は、AIが一人ひとりに寄り添うパーソナル家庭教師として機能する点です。AIはユーザーの学習進捗や解答状況をリアルタイムで分析し、つまずきを検知すると、自律的にヒントを出したり、より簡単な問題に切り替えたりと、個々の理解度に合わせた最適なサポートを提供します。さらに、学習や企業タスクへの参加を通じて成果が「教育クレジット」として蓄積され、将来の学費負担を軽減できるというユニークな仕組みも実装されています。学習意欲そのものを未来への投資に変える、社会貢献性の高いプロダクトです。【秘書】「つい後回し…」を卒業。お母さんのように寄り添う伴走型AI『オカンAI』次に、多忙な現代人が抱える「タスク管理の面倒さ」や「実行への腰の重さ」という、身近な課題に着目したタスク実行支援アプリ『オカンAI』です。このAIは、まるで母親のようにユーザーのスケジュールを管理します。LINEのようなチャット画面で曖昧な言葉で予定を伝えても、文脈や意図を正確に汲み取り、自動でスケジュールを登録します。特筆すべきは、その学習能力です。ユーザーの行動パターン(応答速度や過去のタスク達成率など)を学習し、AIが自律的にリマインドのタイミングや声がけのトーンを最適化していきます。単なるツールではなく、ユーザーの隣で励まし、時にはお尻を叩いてくれる。そんな情緒的な価値を持つパートナーとして、日々の生活を支えてくれます。完成度の高いデモと、思わず使ってみたくなるプロモーションビデオも印象的でした。【営業】営業は「探す」から「自動で生まれる」時代へ。全自動BtoB営業システム『リヴァイアサン』最後に、最も野心的で壮大な構想を持つAGIシステムが披露されました。優れた技術力を持ちながらも、営業活動がボトルネックとなりがちな中小企業や個人開発者をターゲットに設定しています。『リヴァイアサン』は、市場調査からターゲットのリストアップ、各企業の課題分析、そして一社一社に最適化された提案内容の作成とアプローチまで、従来はたくさんの人手と時間を要した営業プロセスを完全に自動化します。その核心は、複数の専門AIエージェントが、互いに連携し、タスクの結果をレビューし合うことで、自律的に精度を高めていくというアーキテクチャにあります。まさに「AI軍団」が自社の営業部隊として稼働するような未来を提示し、ビジネスのあり方を根本から変革するポテンシャルを示しました。3. コメント今回のAGIハッカソンのオーガナイザーを務めた清水さんと、審査員を務めたMyTH株式会社CTO 松本さんにコメントをいただきました。清水さんは、AIBBのメンバーであり、2024年に弊社が行った『AIエージェントハッカソン』の時にもオーガナイザーを務めてくださいました。オーガナイザー:清水さんAGIという世の中を一変するプロダクトを開発する貴重な挑戦を是非多くの方にして欲しいという思いでオーガナイザーを務めました。また、他の方と協力して自分1人では作れないAGIの開発に本気で挑戦したいという思いもありました。AGI開発という難易度の高いテーマであるため、AGIのイメージがついていないという声がありました。そのため急遽開催した対談や質問会は、AGIの本質や具体的な実装にまで言及することができ、繰り返し聴いてくださる方もいて、AGI開発の一助になる会にできたと感じ、嬉しく思います。各チームのアイデアやプロダクトが非常に魅力的で、さらにAGIとして動くことも考慮し作られていることを考えると、より面白く興味深かったです。このハッカソンで生まれたプロダクトが、実際に世の中を変える瞬間を楽しみにしています。最後にこのような貴重な機会をいただき、ボンギンカン株式会社には大変感謝しています。ありがとうございました。審査員:松本さん時間が限られている中で、総合性や自律性の萌芽、可能性を感じさせる作品ばかりで、今後実際に形になっていくことを想像すると楽しみです。審査してみて思ったのですが、AGIは総合的であるからこそ、教育、スケジュール管理、業務エージェントなど、ある程度の方向性をしっかり持たせることで十全な性能を発揮できるのかもしれません。これは、人間におけるジョブ型採用にも似ており、ボンギンカンが掲げるTT型人材にも繋がっていく…人間もまた、General Intelligenceとして共に歩んでいくことが、今後AGIを開発するに当たって大切になってくるのだと思います。皆様の今後のご活躍に、期待しています。イノベーションの源泉は「人」の熱意わずか2週間という時間で未来の片鱗を見せてくれたのは、AIそのものではなく、それに情熱を注いだ参加者の方々です。今回のハッカソンは、優れた才能が集い、協力し合うことで、いかに大きな創造性が生まれるかを改めて示してくれました。参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。これからも、AIBBでは面白い取組を行っていきます。AIBBにご興味のある方AIBBには、100名近くの会員が参加しており、学習と実践を兼ね備えた豊かな交流の場を創出しています。旬なテーマの技術・実装事例の研究一次情報の取得・共有メンバー限定の講座やセミナーオフイベント(交流会BBQ、合宿)メンバーによるプレゼンテーション外部講師による限定セミナー旬な技術を深めるための分科会入会は、以下のGoogleフォームよりお申込みください。https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdWAa8YbSvahryk6-cfI1N8_kbKjZ5bTjR6l2laIpjUJ8m4mQ/viewform